はじめに
インプラント治療を検討している方の中には、歯科医院で「骨が少ないからインプラントは難しい」と言われた経験がある方もいるでしょう。確かに、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む治療法なので、十分な骨の量と質が必要です。しかし、骨が少ないからといって、必ずしもインプラント治療を諦める必要はありません。現代の歯科医療技術では、骨を増やす様々な方法が開発されており、以前は不可能だった症例でもインプラント治療が可能になっています。この記事では、骨が少ない場合のインプラント治療について、骨が減少する原因、骨造成の方法、そして治療の可能性について詳しく解説していきます。
なぜ骨が少なくなるのか
歯を失った後の骨吸収
歯を失うと、その部分の顎の骨は徐々に吸収されていきます。歯があるときは、噛む力が歯根を通じて骨に伝わり、その刺激により骨が維持されます。しかし、歯を失うとこの刺激がなくなり、骨は「使われない組織」として体に吸収されてしまうのです。
抜歯後、最初の1年間で骨の高さの約25パーセントが失われるとされています。その後も徐々に吸収は続き、長期間放置すると、骨の量は大幅に減少してしまいます。
歯周病による骨の喪失
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けていきます。重度の歯周病で歯を失った場合、既に骨が大きく失われているため、インプラント治療が困難になることがあります。
歯周病は日本人が歯を失う最大の原因であり、多くの方が骨不足の問題に直面する背景となっています。
入れ歯やブリッジの長期使用
入れ歯を長期間使用していると、入れ歯の下の骨が徐々に吸収されていきます。特に総入れ歯の場合、この傾向が顕著です。また、ブリッジも、失った歯の部分の骨には刺激が伝わらないため、その部分の骨が減少していきます。
加齢による骨量の減少
加齢とともに、全身の骨密度が低下するのと同様に、顎の骨の量や質も低下します。特に女性の場合、閉経後に骨粗鬆症のリスクが高まり、顎の骨にも影響が出ることがあります。
外傷や感染
事故などの外傷や、歯根の先の感染症(根尖病巣)により、骨が失われることもあります。感染が広範囲に及んでいた場合、骨の欠損が大きくなることがあります。
骨が少ない場合の診断
インプラント治療を行う前には、CT撮影による精密検査が不可欠です。CT画像により、骨の高さ、幅、密度、そして神経や血管の位置などを3次元的に把握できます。
一般的に、インプラントを安全に埋入するためには、高さで10ミリ以上、幅で6ミリ以上の骨が必要とされています。これより少ない場合は、骨造成などの追加処置が必要になります。
骨を増やす方法(骨造成)
骨が不足している場合でも、骨造成という技術により、骨を増やすことでインプラント治療が可能になります。代表的な骨造成の方法をいくつか紹介します。
GBR(骨誘導再生法)
GBRは、最も一般的な骨造成の方法です。骨が不足している部分に、自家骨や人工骨などの骨補填材を置き、その上に特殊な膜(メンブレン)を被せます。この膜により、骨の再生スペースを確保し、周囲の軟組織の侵入を防ぎます。
数ヶ月かけて新しい骨が形成され、インプラントを埋入できる状態になります。GBRはインプラント埋入と同時に行う場合と、先に骨造成を行って骨ができてからインプラントを埋入する場合があります。
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)
上顎の奥歯の上には、上顎洞という空洞があります。上顎奥歯を失うと、上顎洞が拡大し、骨が薄くなることがあります。サイナスリフトは、この上顎洞の底部分を持ち上げ、できた空間に骨補填材を入れて骨を増やす方法です。
大規模なサイナスリフト(ラテラルアプローチ)と、小規模なサイナスリフト(ソケットリフト)があり、骨の減少の程度によって使い分けられます。
ソケットリフト
ソケットリフトは、上顎の骨の高さが少し不足している場合に行う、比較的侵襲の少ない方法です。インプラントを埋入する穴から、専用の器具を使って上顎洞の底を持ち上げ、骨補填材を入れます。
インプラント埋入と同時に行えることが多く、治療期間の短縮につながります。
ベニアグラフト(オンレーグラフト)
骨の幅が不足している場合に行う方法です。自分の他の部位(下顎の奥や腰骨など)から骨を採取し、不足している部分に移植して固定します。
自家骨を使用するため、生着率が高いという利点がありますが、骨を採取する部位に別の手術が必要になるというデメリットもあります。
スプリットクレスト
骨の幅が狭い場合に、骨を縦に切り込みを入れて広げ、その隙間にインプラントを埋入する方法です。同時に骨補填材を入れることもあります。
骨に十分な高さがあり、幅だけが不足している場合に適用できます。
ショートインプラントの使用
骨造成を行わずに対応する方法として、通常より短いインプラント(ショートインプラント)を使用する選択肢もあります。近年のインプラントシステムの進化により、短くても十分な強度と安定性を持つインプラントが開発されています。
骨の高さが5〜8ミリ程度しかない場合でも、ショートインプラントなら対応できることがあります。ただし、適応症例は限られます。
傾斜埋入
骨のある部分を選んでインプラントを斜めに埋入する方法です。特に総入れ歯の方が固定式の歯を入れる「オールオン4」や「オールオン6」という治療法では、この傾斜埋入が活用されます。
骨造成を行わずに済むため、治療期間の短縮や費用の削減につながります。
骨造成のリスクと注意点
骨造成は高度な技術を要する治療であり、いくつかのリスクや注意点があります。
治療期間の延長
骨造成を行う場合、骨が形成されるまで3〜6ヶ月程度、場合によってはそれ以上の時間がかかります。そのため、最終的な歯が入るまでの期間が延びます。
費用の増加
骨造成は追加の処置となるため、通常のインプラント治療よりも費用が高くなります。使用する骨補填材の種類や、造成の範囲によって費用は変わりますが、一般的に10万円から30万円程度の追加費用がかかります。
合併症のリスク
上顎洞を扱うサイナスリフトでは、上顎洞の粘膜を破ってしまうリスクがあります。また、感染や腫れ、痛みなどの術後症状が出ることもあります。
ただし、経験豊富な歯科医師が適切に処置を行えば、これらのリスクは最小限に抑えられます。
喫煙の影響
喫煙は骨の形成を妨げ、骨造成の成功率を大幅に下げます。骨造成を伴うインプラント治療を受ける場合は、禁煙が強く推奨されます。
骨造成以外の選択肢
骨が少なくてインプラントが難しい場合、骨造成以外にも選択肢があります。
ミニインプラント
通常のインプラントより細いミニインプラントを使用する方法です。特に総入れ歯を安定させるための土台として使用されることが多く、骨造成なしで治療できる場合があります。
ブリッジや入れ歯
インプラントにこだわらず、ブリッジや入れ歯という従来の治療法を選択することも一つの方法です。特に高齢で手術のリスクが高い場合や、費用を抑えたい場合には、これらの選択肢も検討する価値があります。
骨造成を成功させるために
骨造成を伴うインプラント治療を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
経験豊富な歯科医師を選ぶ
骨造成は高度な技術を要するため、経験豊富な歯科医師を選ぶことが重要です。インプラント専門医や、骨造成の症例数が多い歯科医院を選びましょう。
術前の健康管理
全身状態が良好であることが、骨造成の成功には重要です。糖尿病などの全身疾患がある場合は、適切にコントロールすることが必要です。
禁煙
喫煙は骨造成の成功率を大幅に下げます。治療前後の禁煙は必須と考えてください。
術後の指示を守る
術後の安静や、処方された薬の服用、食事の注意など、歯科医師の指示をしっかり守ることが大切です。
まとめ
骨が少ない場合でも、現代の歯科医療技術により、インプラント治療を受けられる可能性は十分にあります。GBR、サイナスリフト、ベニアグラフトなど、様々な骨造成の方法が確立されており、以前は不可能だった症例でも治療が可能になっています。
ただし、骨造成には治療期間の延長や費用の増加、リスクも伴います。まずは経験豊富な歯科医師による精密検査を受け、自分の骨の状態を正確に把握することが重要です。その上で、骨造成を行ってインプラントにするか、他の治療法を選択するか、十分に相談して決めましょう。
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