はじめに

子どもの歯が乳歯から永久歯へと生え変わる時期は、成長の大きな節目の一つです。「いつ頃から永久歯が生えてくるの？」「うちの子はまだ生えないけど大丈夫？」と心配する親御さんは少なくありません。永久歯の生える時期には個人差があり、早い子もいれば遅い子もいます。しかし、一般的な目安を知っておくことで、異常を早期に発見したり、適切なケアを行ったりすることができます。本記事では、永久歯が生える時期の目安、生え方の順序、個人差の範囲、注意すべきサインなどについて詳しく解説します。

永久歯への生え変わりの基礎知識

人間の歯は、一生のうちに乳歯と永久歯の二回生えます。乳歯は全部で20本、永久歯は親知らずを含めると32本です。

永久歯への生え変わりは、乳歯が抜けて、その下から永久歯が生えてくるという形で進みます。乳歯の根が徐々に溶けて短くなり、グラグラしてきて、最終的に抜け落ちます。そのタイミングで永久歯が顔を出します。

ただし、全ての永久歯が乳歯の下から生えるわけではありません。6歳臼歯と12歳臼歯と呼ばれる奥歯は、乳歯がない場所に新しく生えてきます。これらは乳歯の奥に追加される形で生えるため、乳歯が抜けることはありません。

永久歯への生え変わりは、一般的に6歳頃から始まり、12歳から13歳頃にほぼ完了します。親知らずは例外で、17歳から25歳頃、またはそれ以降に生える人もいれば、全く生えない人もいます。

最初に生える永久歯

永久歯で最初に生えるのは、多くの場合、6歳臼歯（第一大臼歯）です。6歳頃に生えることが多いため、この名前がついています。

6歳臼歯は、乳歯の一番奥の歯のさらに奥に生えてきます。乳歯が抜けずに生えるため、親も子どもも気づきにくいことがあります。歯茎が腫れたり、噛むと痛かったりして初めて気づくこともあります。

6歳臼歯は永久歯の中で最も大きく、噛む力を支える重要な歯です。しかし、生えたての頃は歯茎に半分覆われており、歯ブラシが届きにくいため、虫歯になりやすいという特徴があります。

6歳臼歯と同じ頃、または少し遅れて、下の前歯（下顎中切歯）が生え変わります。5歳から7歳頃に乳歯がグラグラし始め、抜けて永久歯が生えてきます。多くの子どもにとって、この下の前歯が初めて抜ける乳歯です。

永久歯が生える順序と時期

永久歯が生える一般的な順序と時期は以下の通りです。ただし、これはあくまで目安で、個人差があります。

6歳から7歳頃は、6歳臼歯と下の前歯の中央2本（下顎中切歯）が生えます。この時期は永久歯への生え変わりの始まりです。

7歳から8歳頃は、上の前歯の中央2本（上顎中切歯）と、その隣の歯（側切歯）が生え変わります。下の側切歯も同じ頃に生え変わります。前歯部分の生え変わりが進む時期です。

8歳から9歳頃は、下の犬歯の隣にある歯（第一小臼歯）が生え始めます。奥歯の生え変わりが始まる時期です。

9歳から11歳頃は、上の第一小臼歯、上下の第二小臼歯が生えます。また、上の犬歯も10歳から12歳頃に生え変わります。この時期に奥歯の生え変わりが本格化します。

11歳から13歳頃は、下の犬歯が生え変わり、12歳臼歯（第二大臼歯）が生えてきます。これで親知らずを除く全ての永久歯が生え揃います。

親知らず（第三大臼歯）は17歳以降に生える人もいますが、生えない人も多く、個人差が非常に大きいです。

個人差の範囲

永久歯が生える時期には、かなりの個人差があります。上記の時期はあくまで平均的な目安で、1年から2年程度の前後は正常範囲内と考えられています。

例えば、6歳臼歯は一般的に6歳頃に生えますが、5歳で生える子もいれば、7歳から8歳で生える子もいます。どちらも異常ではありません。

前歯の生え変わりも同様で、5歳で抜け始める子もいれば、8歳頃まで抜けない子もいます。

個人差が生じる要因には、遺伝、性別、栄養状態、全身の発育状況などがあります。一般的に、女の子の方が男の子より少し早く生え変わる傾向があります。また、身体全体の成長が早い子は、歯の生え変わりも早い傾向があります。

兄弟姉妹でも生え変わりの時期が異なることは珍しくありません。上の子が早かったから下の子も早いとは限りません。

注意が必要なケース

個人差の範囲内であれば問題ありませんが、以下のような場合は歯科医師に相談した方が良いでしょう。

8歳を過ぎても全く永久歯が生えてこない場合は、念のため確認が必要です。レントゲン撮影により、永久歯が正常に存在しているか、生える方向に問題がないかを確認できます。

乳歯が抜けたのに、半年以上経っても永久歯が生えてこない場合も相談すべきです。永久歯の先天欠如（もともと永久歯がない）や、萌出方向の異常などの可能性があります。

乳歯がまだ残っているのに、別の場所から永久歯が生えてきた場合も注意が必要です。これは二枚歯と呼ばれる状態で、乳歯を抜歯する必要があるかもしれません。

永久歯の生える順序が大きく異なる場合、例えば前歯より先に奥歯が生え変わるなど、通常と逆の順序で生える場合も、一度確認してもらいましょう。

歯茎が異常に腫れている、痛みが強い、発熱があるなどの症状がある場合は、感染や炎症の可能性があるため、早めに受診が必要です。

生え変わり期のケアのポイント

永久歯への生え変わり期は、虫歯予防において特に重要な時期です。

まず、グラグラしている乳歯の周りは磨き残しが多くなりがちです。痛がって磨けない場合もありますが、できるだけ丁寧に磨きましょう。柔らかい歯ブラシで優しく磨くことが大切です。

生えたての永久歯は、エナメル質が未成熟で虫歯になりやすい状態です。特に6歳臼歯は奥にあって磨きにくく、歯茎に半分覆われていることも多いため、虫歯リスクが非常に高いです。意識的に丁寧に磨く必要があります。

仕上げ磨きは、小学校低学年までは継続することが推奨されます。特に奥歯は子ども自身では十分に磨けないため、親が確認して磨き残しをなくしましょう。

フッ素塗布も効果的です。生えたての永久歯にフッ素を塗布することで、歯質を強化し、虫歯を予防できます。3ヶ月から6ヶ月に一度、歯科医院でフッ素塗布を受けることをおすすめします。

定期検診も欠かせません。永久歯が正常に生えているか、虫歯がないか、噛み合わせに問題がないかなどを、定期的にチェックしてもらいましょう。

永久歯の生え方の異常

永久歯の生え方に異常が見られることもあります。

最も多いのが、乳歯が抜ける前に永久歯が別の場所から生えてくる二枚歯の状態です。特に下の前歯でよく見られます。この場合、乳歯が自然に抜けるのを待つか、歯科医院で抜歯してもらう必要があります。放置すると、永久歯が正しい位置に移動できず、歯並びが悪くなる可能性があります。

埋伏歯という、永久歯が骨の中に埋まったまま生えてこない状態もあります。レントゲンで確認し、必要に応じて外科的に露出させる処置を行うこともあります。

逆生という、歯が逆さまに生えてくる状態や、捻転という、歯が回転して生えてくる状態もまれにあります。これらは矯正治療が必要になることがあります。

先天欠如という、もともと永久歯の数が足りない状態もあります。日本人の約10パーセントに見られると言われています。この場合、乳歯をできるだけ長く使うか、将来的にインプラントやブリッジなどで補う方法を検討します。

親知らずについて

親知らず（第三大臼歯）は、他の永久歯とは異なる特徴があります。

親知らずは、17歳から25歳頃、またはそれ以降に生えることが多いです。親が知る頃には生える年齢になっているという意味で、親知らずと呼ばれます。

しかし、現代人は顎が小さくなっており、親知らずが生えるスペースがない人が増えています。そのため、斜めに生えたり、歯茎の中に埋まったままだったり、全く生えなかったりすることが多いです。

親知らずが正常に生えず、周囲の歯を押したり、炎症を起こしたりする場合は、抜歯が必要になることがあります。親知らずの状態は個人差が大きいため、定期検診で確認してもらいましょう。

まとめ

永久歯が生える時期の目安は、6歳頃から12歳から13歳頃までです。最初に6歳臼歯と下の前歯が生え、順次奥歯へと生え変わっていきます。

ただし、1年から2年程度の個人差は正常範囲内です。早い遅いで過度に心配する必要はありませんが、極端に遅い場合や異常な生え方をしている場合は、歯科医師に相談しましょう。

生え変わり期は虫歯になりやすい時期でもあるため、丁寧なケアと定期検診が重要です。子どもの歯の成長を見守りながら、適切なサポートをしていきましょう。

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